#ホメロス
#松平千秋 訳
#岩波新書
壮大な冒険ファンタジー。
ジブリのアニメを見ているよう。
実際『風の谷のナウシカ』の冒険譚や、『千と千尋の神隠し』の豚に変えられた話は『オデュッセイア』から想を得ているのだろうけれど。
紀元前8世紀頃の伝承物語だが、近現代の文学のように文体やら何やら凝っていない分だけストレートに伝わってくるものがある。
忘れないよう書き出した登場人物(神々)のリスト。〈ア〉行が圧倒的に多い。
▶︎涙、涙の航海
勇猛な兵士たちが何度も大粒の涙を流す。
望郷の念で涙。
仲間の死に涙。
艱難辛苦に涙。
オデュッセウスはトロイヤ戦争に出兵し活躍し、ギリシャ軍は勝利を治めるが、何年たっても帰還しない。
妻ペネロペイアの元には求婚者たちが押しかけ、横暴な振るまいをするが、若いテレマコスには求婚者たちを追い払う力はない。ペネロペイアは夫の帰還を信じて耐え続けている。
繊細で多感なテレマコスは女神アテネに励まされ、父親を探す旅に出る。
▶︎女神カリュプソ (第五歌)
オデュッセウスは女神カリュプソの洞窟で7年もの間足留めされていたが、神々の会議でオデュッセウスを帰国させることが決まり、カリュプソはやむなく従う。
オデュッセウスは筏を作り、故郷に向けて大海を漕ぎ出すが、嵐にあい遭難する。
▶︎パイエケス人の国の王女ナウシカア (第六歌)
オデュッセウスはパイエケス人の国に漂着し、洗い場で洗濯していたナウシカアに助けられ王宮に行く。
▶︎王アルキノオスとの対面 (第七歌〜第八歌)
オデュッセウスは王アルキノオスにこれまでの経緯を説明し、信用を得る。
アルキノオスは宴席を設け、オデュッセウスは楽人の歌うトロイヤ戦の物語に涙する。また、円盤投げの腕前を披露する。
▶︎王アルキノオスに語る漂流譚—蓮喰い族〜キュクロプス— (第九歌)
オデュッセウスは素性を明かし、漂流譚を語る。
ロートバゴイ族のロータス(蓮)は美味でそれを食べた部下たちは帰還する気が失せてしまった。
隻眼の巨人キュクロプス族の国では多くの部下をキュクロプスに食われた。オイディプスはキュクロプスの一人、ポセイドンの子のポリュペモスの目を潰した。
▶︎ 王アルキノオスに語る漂流譚—風の神アイオロス〜女神キルケ (第十歌)
風の神アイオロスの島では厚いもてなしを受け、風を封じ込めた袋をもらうが、帰国寸前に部下が開いたため嵐になってしまう。
女神キルケの島では、部下たちが秘薬を使うキルケに豚に変えさせられたりするが、元の姿に戻してもらい歓待を受け、その島で1年を過ごす。
▶︎ 王アルキノオスに語る漂流譚—冥府〜再びキルケ〜セイレン〜トリナキエの島(第十歌)
冥府では、出発直前にキルケの館の屋根から落ちて死んだエルペノルに再開し、その遺骸を引き取りにオデュッセウスは再びキルケの島に赴く。
魔女セイレンたちの歌を聴いた者は、魅せられその餌食になるが、オデュッセウスは、その歌が聞きたく、部下たちの耳を蜜蝋で塞ぎ、自分は帆柱に縛り付けもらい、漕ぎ抜ける。
トリナキエの島で部下たちは禁断の牛を食べたため、皆命を落としオデュッセウス一人残される。
下巻は第十三歌から第二十四歌を収める。
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想像もできないほど大昔の話なのに、そっくりそのまま連ドラのお手本として現代に通用しそうなほどストーリー展開も登場人物のキャラクターも心理描写も素晴らしい。
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オデュッセウスはようやく故郷のイタケに帰還する。
しかし、オデュッセウスは、妻や屋敷に仕える者たちの心を試すため女神アテネに頼み乞食の姿に変えてもらう。
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そして女神アテネに帰国を促され戻ってきた息子テレマコスと大号泣の再会を果たし、父子はペネロペイアの求婚者たちへの復讐の機会を窺う。
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父子は、求婚者たちがオデュッセウス家を食い潰さんばかりに傍若無人に飲み喰いしている宴席に乗り込む。
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女神アテネからペネロペイアに吹き込んだ提案で弓矢の競技が行われる。アテネがオデュッセウスを乞食の衣装のままで元の姿以上の若いマッチョに変えたのが可笑しい。
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求婚者の筆頭アンティノオスやエウリュマコスがオデュッセウスに弓矢で射られ死ぬ場面は結構リアルに描かれている。
臨場感あり、天誅が下り胸のすく思いもしたが、血の粛正はかなり残虐‥
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求婚者たちと情を通じていた女中や不忠の使用人も容赦なく殺される。
求婚者エウリュマコスに気に入られていた山羊使いはここに書けないほど酷い殺され方だった。
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大量殺戮の後片付けもすみ、さて、妻ペネロペイアとめでたく再会かと思いきや、目の前の男がオデュッセウスであると俄には信じられない。
本人しか知り得ない寝所の構造を知っていたことを確認し始めて夫と認める。ペネロペイアは留守中苦難の生活を送ってきたので疑ってしまったと謝り、夫婦は再会を喜ぶ。
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最後は納得の結末。
殺した求婚者たちの親族と戦闘状態になるが、アテネの裁定により和解する。
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