#パルタイ
#新潮文庫
革命を目指す「パルタイ」に参加した「わたし」。
「パルタイはどこかに実在し、奇妙に複雑なメカニズムで動いており、たえずのびちぢみしてはわたしのような個人をのみこみまた吐きだしているにちがいない。しかしその存在は非常に抽象的なものだ。そしてそれがさまざまな≪掟≫と≪秘儀≫の総体からなっていることは、わたしにはある種の宗教団体と同じにみえるほどだ。‥‥」
わたしのもとには赤いパルタイ員証が届くが、わたしはパルタイから出る手続きをしようと決意する。
* * *
パルタイ(パーティ、党)は、ここではかつての日本共産党だが、いつどこにでも、サークルやオウム真理教などの新興宗教といった形でパルタイは実在し、若者はのみこまれていく。
▶︎非人
しっぽのある非人たちの世界の不条理劇。
『異邦人』のような顛末。
▶︎貝の中
歯科の女子学生寮の生活を倉橋由美子らしい生々しい身体表現で描く。後半主人公と革命党員の彼との関係が描かれ文体も変わり、愛とか嫉妬という感情に主人公が屈する。
▶︎蛇
蛇をのみこんでしまった寮生K。
革命党員Sは、当局の陰謀の犠牲となって蛇にのまれたことにすべきだという。最後、寮生Kの口から蛇が頭を出し、蛇をのみこんでいるKを蛇がのみこむという荒唐無稽な展開に。
▶︎密告
上述の作品は、いずれも臭気、排泄物、吐物、分泌物といった描写があるのだが、この短編では僅かにある程度で、珍しく、「美しい」という言葉が出てくる。