猫の本棚名作紹介ブログ

古今東西の名作を日々の雑感もまじえ紹介します。読書で人生を豊かに。

『ミドルマーチ 4』ジョージ・エリオット 

■ミドルマーチ 4■ 全4巻 1871-1872 ジョージ・エリオット 作 『ミドルマーチ』は群像劇だが、主人公はドロシアと言ってよいだろう。彼女は困っている人を放っておけない、正義感が強い女性だ。情熱的な性格でカッとなりやすく猪突猛進するが細やかな気遣いも…

『ミドルマーチ 3』 ジョージ・エリオット

隙のない綿密なプロットで、さらにどの登場人物も丁寧に心理描写されているので、嫌な人物でさえその行動に共感できないまでもある程度納得してしまう。 現在放送中の大炎上している朝ドラの制作者に見習ってほしい素晴らしいドラマ。 第5部 死の手 リドゲイ…

『ミドルマーチ 2』ジョージ・エリオット作

■ミドルマーチ 2■ 全4巻 1871-1872 ジョージ・エリオット 作 第3部 死を待ちながら 第4部 三つの愛の問題 遺産相続のドロドロな展開。ベタな題材であっても、相続争いは面白い。奇妙な容貌の隠し子まで現れて‥‥。 そして3組のカップルの愛の行方は? 第3…

『ミドルマーチ 1』ジョージ・エリオット

■ミドルマーチ 1■ 全4巻 ジョージ・エリオット 作 ペンネームは男性名だが女性作家である。 『高慢と偏見』が恋愛を描いていたのに対し、こちらは「地方生活についての研究」という副題が示すように、架空の地方都市ミドルマーチのさまざまな人物にスポット…

『高慢と偏見』 ジェイン・オースチン

シェークスピアを筆頭に世界的名作を著した作家を輩出してきたイギリス。なかでも有名なのは19世紀の女性小説家だろう。19世紀初頭のジェイン・オースチン、19世紀中期のブロンテ姉妹、19世紀後期のジョージ・エリオットは世界文学史において輝きを放ってい…

『八月の光』フォークナー

#八月の光 (上) (下)1932 #フォークナー #諏訪部浩一 訳 #岩波文庫 『アブサロム‥』同様ミシシッピ州の架空の都市ヨクナパトーファ郡ジェファソンが舞台。『アブサロム‥』と違い普通の文体で読みやすい。決して読み流せるような作品ではない。21章どの章も…

『アブサロム、アブサロム』フォークナー

#アブサロム、アブサロム 1936年 #フォークナー 1897年 - 1962年 #藤平郁子 訳 ▶︎攻略法(?) 『アブサロム‥』は、およそ100年に及ぶファミリー・ヒストリーであり、謎がベールを剥ぐように徐々に解明されていく面白さがある作品である。すでに投稿したガルシ…

『オデュッセイア』 ホメロス

#オデュッセイア #ホメロス #松平千秋 訳 #岩波新書 古代ギリシャの長編叙事詩。 壮大な冒険ファンタジー。 ジブリのアニメを見ているよう。 実際『風の谷のナウシカ』の冒険譚や、『千と千尋の神隠し』の豚に変えられた話は『オデュッセイア』から想を得て…

『百年の孤独』 ガルシア・マルケス

マコンドという架空の村のブエンディーア一族の100年にわたる物語。 一族代々の恋愛、出産、死という人間のっtgfrtrygt普遍的な営みと、その間に勃発した戦争が語られる。 新型コロナウイルスのパンデミックで世界は誰もが想定できなかったほど様相を変えた…

山の音

#山の音 1949〜1954(昭和24〜29) #川端康成 1899〜1972(明治32〜昭和47) #岩波文庫 今まで読んだ川端作品とはだいぶ趣きが違う。 敗戦直後のある家族の風景を、老いを自覚するようになった父親の視点から季節の移ろいとともに描く。 62歳の信吾は妻保子と…

老人と海

#老人と海 1952 #ヘミングウェイ 1899-1961 #福田恆存 訳 84日も釣果のない、運も尽きたかと思われる老人が、独り小舟で漁に出る。 若い頃の初読では、カジキと格闘する老人の、強いアメリカの象徴のような不屈の精神が印象的だった。 再読では、美しく大き…

蟹工船

#蟹工船 1929 #小林多喜二 1903(明治36)-1933(昭和8) #岩波文庫 本日は選挙日ですね。 自分の生きる環境・社会を変えたいと思ったら選挙権使わない手はありません。 * * * 目を背けたくなるような日本の黒歴史。戦地の兵隊も悲惨だったが、労働者も悲惨だ…

カラマーゾフの兄弟(下)

#カラマーゾフの兄弟(下) #ドストエフスキー #原卓也 訳 #新潮文庫 怪演を見せた父親役の吉田剛太郎はすぐブレークしたが、登場シーンも少ない脇役で意外な地味な犯人を演じていた無名の俳優は忘れ去られた。松下洸平が朝ドラで人気者になっても、すぐにス…

カラマーゾフの兄弟(下)少年たち

#カラマーゾフの兄弟 #ドストエフスキー #少年たち スピンオフドラマとして独立させたいような物語です。 第四部 第十編 少年たち 親殺しの話の前に、いったんイリューシャと同級生たちの物語に移ります。 まるで学園ドラマなのですが悲しすぎる展開です。 …

カラマーゾフの兄弟(中)

#カラマーゾフの兄弟(中) #ドストエフスキー #原卓也 訳 #新潮文庫 世界最高の文学と言われる本書。 推理小説であり、宗教哲学書であり、恋愛小説であり、悲劇であり、喜劇であり、詩であり、そのテーマは愛、生き方、神と人間、信仰、家族、いじめ、児童…

金閣寺

新型コロナ感染拡大で、戦々恐々とする日々が続いています。私は新型コロナワクチン(ファイザー製)を接種しましたが、デルタ株に対する効き目は50%くらいということなので、引き続きかなり用心して生活しています。一年以上公共交通機関を利用していないかも…

カラマーゾフの兄弟(上)五編の4まで

#カラマーゾフの兄弟 #ドストエフスキー #原卓也 訳 #新潮文庫 4部(1〜3編、4〜6編、7〜9編、10〜12編)より成る超大作。 2013年に舞台を現代日本に置き換えテレビドラマ化された。夜11時台の番組だったが、超有名な原作の世界を見事に描き評判となった。中…

若きウェルテルの悩み

#若きウェルテルの悩み #ゲーテ #高橋義孝 訳 #新潮文庫 自身の絶望的な恋の体験に基づいて執筆されたゲーテ23歳の作品。 友人に宛てた書簡の形式をとっている。許婚者のいる美しい女性ロッテに恋をし、遂げられない思いに絶望してついには自殺してしまう。 …

パルタイ

#パルタイ #倉橋由美子 #新潮文庫 カフカ、カミュの影響がみられる処女作品集。 ▶︎パルタイ 昭和35年1月 革命を目指す「パルタイ」に参加した「わたし」。 「パルタイはどこかに実在し、奇妙に複雑なメカニズムで動いており、たえずのびちぢみしてはわたしの…

出家とその弟子

#出家とその弟子 #倉田百三 1891-1943 #岩波文庫 ▶︎青年たちの熱狂的な支持を得て、夏目漱石の『こころ』とならび創業まもない岩波書店の大ベストセラーとなった。作者26歳の時の作品。 先日インスタにポストした北杜夫の『楡家の人びと』の中で、学業成績…

シーシュポスの神話④ 不条理な論証 哲学上の自殺

#不条理な論証 *l’absurd 「不条理」というと難解なので、「理不尽」と直して理解に努めていたが、もっとぴったりな訳が見つかった。「ばかげた」である。これだと荒唐無稽という意味も含んでいる。 ▶︎実存哲学の考えーシェストフとキルケゴール2人の『飛躍…

シーシュポスの神話③ 不条理な論証 不条理な壁  

ふと、舞台装置が崩壊することがある。起床、電車、会社や工場での4時間、食事、電車、4時間の仕事、食事、睡眠、同じリズムで流れてゆく月火水木金土、ー機械的な生活の果てに倦怠がありある日、≪なぜ≫という問いが頭をもたげる。すると意識の運動が≪はじま…

シーシュポスの神話② 不条理な論証 不条理と自殺

#不条理な論証 #カミュ ▶︎真に重大な哲学上の問題 それは自殺ということだ。 人生が生きるに値するか否か、人生の意義を判断する、これが哲学の根本問題に答えることなのである。 あらゆる本質的な問題について、ー本質的問題とは、ときにひとを死なしめるか…

シーシュポスの神話① カミュの『不条理』とは

カミュの『不条理』とは 翻訳者である清水徹氏の付記によれば、 基本的には、形容詞 absurde を「不条理な」、名刺 l’absurde を「不条理」と訳している。 普通のフランス語としては、absurde とは「なんとも筋道の通らない」「意味をなさない」「荒唐無稽な…

『ペスト』カミュ

カミュは1957年戦後では最年少の43才でノーベル文学賞を受賞、1960年交通事故で亡くなった。物語は、フランスの植民地であるアルジェリアのオラン市をペストが襲う。194*年4月最初の死者が確認されてから、流行が収束しロックダウンが解除される翌年の2月…