猫の本棚名作紹介ブログ

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『ミドルマーチ 4』ジョージ・エリオット 

 

■ミドルマーチ 4■  全4巻 1871-1872

ジョージ・エリオット 作

 

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『ミドルマーチ』は群像劇だが、主人公はドロシアと言ってよいだろう。彼女は困っている人を放っておけない、正義感が強い女性だ。情熱的な性格でカッとなりやすく猪突猛進するが細やかな気遣いもできる決断力・実行力、そして資産もある人物だ。

実在の人物で真っ先に思い浮かぶのは、マザー・テレサ(コルタカの聖テレサ)。今一度読みとばしたプレリュード(1巻)を読むと、教団の改革に情熱を傾けたアビラの聖テレサ(1515ー82)の人生について言及している。そして情熱や才能は持っているけれども社会の壁にあたり空しい人生を送る多くの女性についても。

 


作者がペン・ネームに男性名を用いているのは、そんな障壁を乗り越えるためなのだろうか?

 


***

▶︎自己破産寸前のリドゲイトと未必の故意殺人を犯すバルストロード

 


リドゲイトはロザモンドの浪費による借金で、自己破産寸前まで追いやられる。

バルストロードは、過去の悪事を知っており自分を繰り返しゆすりにきたラッフルズが倒れたので看病する。往診してくれたリドゲイトの2つの指示(阿片の服用方法と酒を飲ませないこと)にそむくことになり、結果的にラッフルズは死にいたる。明確な殺意があったわけではないが、このまま死んでくれたらよいのにという思いがあったことは否定できない。

 


しかし、バルストロードに平安は訪れずさらなる地獄が待ち受けていた。彼の過去の悪行とラッフルズ殺人の噂は町中に広がった。彼は法的には裁かれなかったが、地位も名誉も失う。

 


彼から融資を受けたリドゲイトまで世間から疑いの目が向けられる。

 


▶︎ラディスローとロザモンドの不倫疑惑に対し動揺するが対峙し、リドゲイトを救おうとするドロシア

 


ドロシアは、リドゲイトの無実を晴らそうと奔走する。

 


リドゲイトの妻ロザモンドは自己中心的で人を思いやることができない性格。穏やかだが非常に頑固。ロザモンドの贅沢のため生活は困窮する。夫婦仲が冷え切ったため、以前から音楽という共通の趣味があり仲のよいラディスローが心の拠り所になる。

 


2人の親密な様子を見てラディスローに思いを寄せているドロシアは動揺するが、個人的感情よりも使命感のほうが打ち勝つ。リドゲイトが断じて殺人に加担するような人ではないとロザモンドに切々と説明する。ロザモンドはラディスローから君のことは好きではないとキッパリ言われ、生まれて初めて打ちのめされる。ドロシアの真摯な説得もあり改心し、夫婦の危機を乗り越える。

 


▶︎妻の鑑のようなバルストロード夫人

バルストロードの後妻ハリエットは、ヴィンシー市長の妹、ロザモンドの叔母にあたる。バルストロードが殺人を犯し、法的には裁かれなかったものの世間から抹殺された身になり、妻は衝撃を受けるが、姪のロザモンドとは違って健気にも夫を支え続けようと決意する。

 


▶︎ドロシアはラディスローと結婚

小説はフィナーレに向かう。

妹夫婦をはじめ、周囲はこの結婚を快く思わなかった。ドロシアが結婚すると、遺言により亡夫の遺産は受け取れない。家財産を持たないラディスローとの結婚すれば裕福ではなくなるが、ドロシアはそんなことは意に介さない。

 


登場人物たちは皆、試練を乗り越え新たな人生に歩を進める。

 


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