猫の本棚名作紹介ブログ

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カラマーゾフの兄弟(上)五編の4まで

#カラマーゾフの兄弟

#ドストエフスキー

#原卓也

#新潮文庫

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4部(1〜3編、4〜6編、7〜9編、10〜12編)より成る超大作。


2013年に舞台を現代日本に置き換えテレビドラマ化された。夜11時台の番組だったが、超有名な原作の世界を見事に描き評判となった。中でも吉田鋼太郎の舞台俳優らしい大音声の圧倒的な怪演でブレイクした。何と大袈裟な演技、と思っていたが原作を読むとフョードルはそんな人物だ。

 

ロシアの小説は、登場人物の名前で混乱し挫折しやすい。ロシア人の名前は、名・父称・姓の3つの要素から成っている。さらに愛称もあり、小説の途中から突然愛称に変わって、ずっと別の登場人物かと思って読んでいたなんてこともあるので、登場人物名をリストアップしながら読んでいる。

 

第一部

第一編 ある家族の歴史


・フョードル・パーヴロウィチ・カラマーゾフ 地主横暴で強欲、女好き。妻が死んでも息子を養育せず放置。息子の顔すら覚えていない。(テレビドラマキャスト: 吉田鋼太郎)

・ドミートリイ・フョードロウィチ・カラマーゾフ (ミーチャ)長男 28歳 最初の妻の子。(斉藤工)

・イワン・フョードロウィチ・カラマーゾフ 二男。24歳。勉強に対して並外れた才能を示し、プライドが高い。13歳のとき養育してくれたポノレフの家庭を離れモスクワの全寮制学校に入った。(市原隼人)

・アレクセイ・フョードロウィチ・カラマーゾフ (アリョーシャ) 三男 19歳 僧侶となり、ゾシマ長老のもとで修行する。4歳で母に先立たれるが、終生母のことを覚えていた。皆に愛される。(林遣都)

・パーヴェル・フョードロウィチ・スメルジャコフ カラマーゾフ家の召使い兼コック フョードルの私生児と噂される。(松下洸平
・アデライーダ・イワーノヴナ・ミウーソフ フョードルの最初の妻 教師と一緒にぺテスブルグに駆け落ちし突然死んだ。

・グリゴーリイ カラマーゾフ家の忠僕(渡辺憲吉)

・ピョートル・アレクサンドロウィチ・ミウーソフ アデライーダの従兄、パリ帰り。4歳のドミートリイの後見人となり引き取るが、再びパリに行ってしまったため、ドミートリイは親戚を転々とする。

・ソフィヤ・イワーノヴナ フョードルの2度目の妻。孤児となりヴォロホフ将軍の未亡人の養女となった。16歳でフョードルに見そめられ嫁ぐ。イワンを結婚後1年目に、アレクセイをその3年後に産む。アレクセイが4歳のとき、亡くなる。2人は父親にすっかり忘れさられ、グリゴーリイのもと、召使小屋に引きとられた。

・ソフィアが死ぬとヴォロホフ将軍の未亡人が乗り込んできて、いきなりフョードルにびんたを二発くらわせ、召使部屋で汚い下着の2人の子どもを見つけグリゴーリイにもびんたし、子どもたちを自分のところに連れ去った。

その後間もなく未亡人はこの世を去ったが、二人の子どもに千ルーブリずつ与えると遺言した。

・エフェム・ペトローウィチ・ポレノフ 将軍夫人の筆頭相続人。夫人の残した千ルーブリずつを子どもたちが成人するまで貯金した。養育を放棄したフョードルに代わって、自分の財産で2人を養育した。


ドミートリイ28歳、イワン24歳、アリョーシャ19歳のとき、家族は初めて全員が一堂に集まった。

 

見習い僧となったアリョーシャは、修道院のゾシマ長老に非常に目をかけられていた。ゾシマ長老は信者たちに慕われていた。信者は顔を拝んだだけで、感涙にむせび平伏すのだった。

 

第二編 場違いな会合

1 修道院に到着

長男ドミートリイと父親フョードルの間の金銭トラブルを話し合うためと次男イワン、ミウーソフ(50歳、フョードル最初の妻の従兄)らが、ゾシマ長老と三男の修行僧アリョーシャのいる教会に集まる。


2 年とった道化

フョードルは挨拶がわりに、くだらない冗談が受けず失敗した話を大声で饒舌に語る。「今もすべっているじゃないか」とつっこむミウーソフ。

誰もが敬虔な気持ちで訪れる教会で、醜態を晒している父親の姿に修行僧アリョーシャは泣き出しそうになる。


フョードルは、「羞恥心ゆえに道化になるんです。」と言うと、ゾシマ長老はこう言った。「あなたにとっていちばん大切なのは自分に嘘をつかないことだ。自分に嘘をつくものは、いかなる真実も見分けがつかなくなり、自分も他人も尊敬できなくなる。愛することもやめ、心を晴らすために情欲にしたがい、ついには畜生道にまで堕ちる。」


3 信者の農婦たち

長老ゾシマは部屋を出て、次から次へと多くの信者の相談に的確な返答をした。


4 信仰のうすい貴婦人

車椅子の娘リーズを連れた貴婦人に、ドミートリイに婚約者カテリーナ・イワーノヴナの手紙を渡すようアリョーシャは頼まれる。リーズはアリョーシャに好意を持っている。


5 アーメン、アーメン

長老が再び部屋に戻ると、イワンが自分の論文について司祭に話していた。あらゆる地上の国家はゆくゆくは全面的に教会に変わるべきだ、という主旨だった。


長老は、犯罪者に教会はどのように対応すべきかを論じた。ロシアの犯罪者は、まだ信仰を持っているから、教会は愛情豊かな母親のように、実際的な懲罰を避けている、と。ローマのように教会が国家になるのではなくて、国家が自らを高めて教会になるのだ、と。


6 こんな男がなぜ生きているんだ!

ドミートリイは大分遅れて到着する。(召使スメルジャコフに約束の時刻を何度も確認したが、間違った時刻を教えられた。伏線?)


ドミートリイはフョードルと口汚い罵り合いになり非難の応酬は金銭問題だけでなく女性問題に及ぶ。ドミートリイは婚約者がいるのに、妖婦グルーシェニカのところに通っているとフョードルが責めれば、その妖婦に自分を誘惑するよう焚きつけたのは父親だと言い返す。怒り狂う2人は、決闘だ!と話合いは紛糾する。


すると、長老がドミートリイの足元に跪き額を床につけ「赦しておあげなさい」と言った。その場の興奮はおさまった。


7 出世主義者の神学生

アリョーシャの友人の神学生ミハイル・ラキーチン(ミーシャ)は、グルーシェニカと関係があるので、カラマーゾフ家の女性関係について知っている。ドミートリイはグルーシェニカと一緒になりたいので、美しい婚約者カテリーナ・イワーノヴナをイワンに譲ろうとしている。父親もグルーシェニカに首ったけで、先程の醜態もそれが原因だという。


第三編 好色な男たち

●スメルジャコフ

フョードル・カラマーゾフの家には当時、母屋にフョードルと息子イワンが、召使い用の離れに老僕のグリゴーリイとその老妻マルファ、とスメルジャコフという若いコック兼召使いが住んでいた。

スメルジャコフは、リザヴェータ・スメルジャーシチャヤという非常に小柄な白痴だけれど性格がよく町の人から好かれていた女が、カラマーゾフ家の庭に産み落としたフョードルの隠し子だった。リザヴェータは出産後、すぐ亡くなった。


●神についてそれぞれの考え

「3熱烈な心の告白ー詩によせて」でドミートリイはこう言っている。「悪魔にのこのこついていくような俺でも、やはり神の子なんだし、神を愛して、それなしにはこの世界が存在も成立もしないような愛を感じているんだよ。」「ソドムの中にこそ美が存在しているんだよ。そこでは悪魔と神が戦い、その戦場がつまり人間の心なのさ。」


アリョーシャが父の家を訪ねると、人嫌いで寡黙な、それでいて人を小馬鹿にした薄笑いを浮かべる召使いのスメルジャコフが珍しく意見をいう。アジア人の捕虜になり改宗を迫られたが兵士が信仰を裏切ることなく死んでいったという話を聞き、仮にそのような災難にあってキリストの名を否定したとしても、苦行のために自分の命を救い、永年善行で償うとしたら、罪にはならない、と。


イワンは神はないし、不死もない、という意見。

アリョーシャはもちろんその反対。


●泥沼の愛憎劇

アリョーシャはドミートリイの「よろしく。もう二度と伺わないから」という伝言をカテリーナの伝える。そこにはグルーシェニカが来ていた。グルーシェンカはカテリーナに、ドミートリイとは結婚しないと言っておきながら、ドミートリイの伝言を聞くと豹変しカテリーナをあざ笑い出て行く。カテリーナも口汚い言葉を吐く。


車椅子のリーズはアリョーシャに愛の告白の手紙をわたす。

 

第ニ部 

第四編 

1 フェラポント神父

ゾシマ長老が『奇蹟』を起こしたという噂はたちまち遠方にまで届いた。昨日、信心深い老女が、一年も音沙汰なしの息子について長老に相談したが、長老の予言どおり息子から連絡があったというものだ。


ゾシマ長老のいる修道院には、長老制度に反対するフェラポント神父がいた。フェラポント神父は天の精霊と交わりがあり、人間とは口をきかないという噂流れていた。

遠いオブドールスクからゾシマ長老の『奇蹟』をきいて、訪れた修道僧は長老よりむしろフェラポント神父に心が傾くのだった。


長老ゾシマとは、アリョーシャに父の言いつけどおり家に戻るよう声をかける。「キリストと同じ姿をもつ人間の心にキリスト教は生き続けている、かりに新たな宗教・思想というようなものを作ろうとしても奇形ばかりができあがる。」というパイーシイ神父の言葉に、アリョーシャは自分を熱愛してくれる新しい指導者を見出した。


2 父のところで 

3 中学生たちとの結びつき

アリョーシャは、父フョードルの元に戻った。父はドミートリイ(ミーチャ)への苛立ちは収まらず敵意に燃えていた。


父のところを出て、ホフラコワ夫人の家に向かう途中、中学生に石を投げられ、中指に噛みつかれた。カラマーゾフだと知っていて石を投げたらしい。


4 ホフラコワ夫人の家で

娘のリーズが愛の告白の手紙を返してほしい、というと、アリョーシャは法に定められた年齢に達したら結婚しようという。


夫人の家には、ドミートリイの婚約者のカテリーナ・イワーノヴナが来ていた。


5 客間での病的な興奮

客間には、兄のイワンも来ていた。イワンはカテリーナを愛している。しかし、カテリーナの本心はどうだろう、アリョーシャはあれこれ考える。カテリーナは最終結論を話す。

「今となっては、ドミートリイを愛しているのかさえわからない。ただ彼を憐れんでいる。今でも愛しているとすれば憎んでいるはずではないか。

イワンは賛成してくれたが、ドミートリイが性悪女のグルーシェンカと結婚しても、一生彼のことを見捨てない。」

「私は彼の神さまになって、彼に祈りを捧げさせる。どうしても最後には私を認めさせる。」


アリョーシャは、「カテリーナは本当はイワンを愛しているが、ドミートリイは病的な興奮で偽りの気持ちで愛している、自分にそう信じこませている」と言った。


イワンは「カテリーナは一度も僕を愛したことはない。僕がこの人を愛しているのは知っていたが、友だちとしても必要としなかった。あなたは、あなたを侮辱する兄を愛している。すべてはあなたのプライドの高さからきている。」

もう戻らないと言い残しモスクワに去っていった。


早速、カテリーナは、ドミートリイの乱暴沙汰の尻拭いをしようと、お見舞い金を相手の二等大尉スネギリョフ(スロヴォエルス)に届けてほしいとアリョーシャに託す。ドミートリイは、衆人環視の中、中学生の息子が赦しを乞い泣き叫ぶ目の前で、往来を引き回したのだった。


6 小屋での病的な興奮

アリョーシャは二等大尉の家に向かう道すがら、「恋の感情について何とばかなことをいったのだろう、自分が恥ずかしいだけならよいが、新しい不幸の原因になってしまった。長老は人々を和解させるために、僕を送り出してくれたのに。」と思っていた。


退役二等大尉の家は小さく貧しかった。

その家には、病気でこけた頬の奥さんアリーナ・ペトローヴナと赤毛の不器量な若い娘ワルワーラ・ニコラーエヴナ、さらにせむしの若い娘ニーナ・ニコラーエヴナ、指を噛んだ息子イリューシャがいた。

アリョーシャは、父親と外に出てお金を渡そうとする。イリューシャはカラマーゾフ家への怒りから学校でも苛つき友だちからイジメにあっている。お金を受けとったということが周囲に知られれば、イリューシャはますますイジメにあうだろう、息子はあいつと決闘してくれ、とまで言っていると。

 

このお金のことは、自分もカテリーナも口外しないからとアリョーシャは父親にお金をわたす。

受けとったもらえたかと思ったが、急に父親はお札をもみくちゃにして地面に叩きつけるのだった。

「自分の名誉を売りはいたしません!一家の恥と引きかえにあなたのお金を受け取ったりしたら、うちの坊主になんと言えばいいのです?」涙にむせぶ早口でこう言い捨てるなり、彼は走り去っていった。


第5編 プロとコントラ*       * 賛否

1 密約

「明日になれば、あの人はこのお金を受け取るんです。あの人は僕の前であまりお金を嬉しがって、それを僕に包み隠さなかったことに腹を立てたんです。『あなたは誇りに満ちた方です、あなたは立派にそれを証明なさったのですから、今度は気持ちよく受け取って、私たちを許してください』こう言えばあの人はきっと受け取りますとも!」

リーズは、アリョーシャが若いのに人の心の動きがわかるのに関心する。


2 ギターを持つスメルジャコフ

アリョーシャは、悲劇の予感がしてドミートリイを探した。

するとギターの伴奏で歌うスメルジャコフの声が聞こえた。


スメルジャコフは家主の娘マリヤ・コンドラーチエヴナに、ドミートリイは品行も頭の程度もすかんぴん振りもどんな下男にも劣るほどなのに、皆から敬われていると、悪口を言っている。


アリョーシャは、イワンとドミートリイが飲み屋で会っているはずだとスメルジャコフから教えられ、飲み屋に急いだ。


3 兄弟、近づきになる

イワンは飲み屋にいたが、ドミートリイはいなかった。

2人は神の存在について論じ合う。


4 反逆 

イワンは動物虐待、幼児虐待の話をした。さらに飼い犬を怪我させた少年を母親の前で素っ裸にされ猟犬に咬み殺させた、この将軍の処分は銃殺にすべきか?と問うと、アリョーシャは思わず、銃殺です!と答えてしまう。お前の中にも悪魔がいる、と喜ぶイワン。なぜ僕を試すのかと問うアリョーシャ。

*     *     *     *     *

「5 大審問官」はメインストーリーに直接関係ないと思われ読み飛ばしてもいいかもしれないが、宗教的観点から読む場合、重要で有名な項なので、今回は読もうと思う。

 


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