猫の本棚名作紹介ブログ

古今東西の名作を日々の雑感もまじえ紹介します。読書で人生を豊かに。

『百年の孤独』 ガルシア・マルケス

マコンドという架空の村のブエンディーア一族の100年にわたる物語。

 一族代々の恋愛、出産、死という人間のっtgfrtrygt普遍的な営みと、その間に勃発した戦争が語られる。


 新型コロナウイルスパンデミックで世界は誰もが想定できなかったほど様相を変えた。事実は小説より奇なりというが、はるかに小説を上回るこの不条理な現実。

 本書は魔術的・非現実的な描写と現実的描写が見事に融合し、この未曾有の厄災の只中の現実世界をも凌駕する小説のひとつだと思う。

 

f:id:nekonohondana:20220519153015j:image
f:id:nekonohondana:20220519153018j:image


▶︎マコンド村の建設と兄弟の成長

 族長ホセ・アルカディオ・ブエンディーアは天文学錬金術に夢中になり、ジプシーのメルキアデスから実験道具を買うため妻ウルスラ・イグアランのヘソクリを使い激怒させている。

 夫婦には、兄ホセ・アルカディオ(父と同じ名前)、弟アウレリャーノという名の二人の子供がいた。そしてもう一人妊娠していた。ウルスラとホセ・アルカディオ・ブエンディーアはいとこ同士の近親婚だったので結婚当初、イグアナのような奇形が産まれることを恐れていた。夫婦に子供ができないことをからかったブルデンシオ・アギラルをホセ・アルカディオ・ブエンディーアは投げ槍で殺してしまう。ブルデンシオ・アギラルは毎晩化けて出てくるので、夫婦は移住することにした。3年以上にも及ぶ旅の途中でウルスラは健康な子供を産み落とす。そしてある川岸の野営地に村を建て、マコンドと名付けた。そこで次男アウレリャーノが誕生したのだった。


▶︎長男ホセ・アルカディオの恋愛とアルカディオの誕生、ウルスラの娘アマランタ誕生

 長男のホセ・アルカディオは堂々たる体格の若者に育った。家事の手伝いやトランプ占いをしているピラル・テルネーラという女に誘惑され、関係する。

 そんなある日ウルスラは女の赤ん坊アマランタを産む。ピラルはホセ・アルカディオに子供ができたと告げる。ホセ・アルカディオは悩むが、夜市をぶらぶらしているととても若くきれいなジプシーに出会う。ホセ・アルカディオはその娘を抱き、ジプシーたちにまじって村を去った。

 ピラル・テルネーラが産んだ男の子は生後2週間目に祖父ホセ・アルカディオ・ブエンディーアたちのもとに引き取られアルカディオと呼ばれた。その世話はビシタシオというグアヒロ族の女にまかされた。

 

▶︎次男アウレリャーノのレメディオスへの恋、レベーカの登場

 アウレリャーノは思春期に達し口数の少ない孤独を愛する人間に変わり、金細工の実験に夢中になっていた。

 ある日孤児となり両親の遺骨と手紙を携えやってきた遠縁にあたるレベーカという少女を引き取ることになる。間もなく彼女は家族の一員とみなされるようになった。

 そんな中町全体に不眠と物忘れを症状とする疫病に冒される。家中の物に名札を貼るなどして対処していたが、尋ねてきたジプシー・メルキアデスが取りだした液体を飲んだ途端、記憶が回復する。

 町長のドン・アポリナル・モスコーテはマコンドにやってきて、祖国の独立記念日を祝うため住居の壁はすべて青く塗り直すよう告示を出そうとした。それには従えないというホセ・アルカディオ・ブエンディーアとの間に対立が生じるが町長一家のために家を手配する。町長は二人の娘16歳のアンバーロと9歳の美少女レメディオスを連れてきていた。アウレリャーノはレメディオスに想いを寄せる。

 

▶︎レベーカとアマランタが美青年ピエトロ・クレスピをめぐって

 真っ白く塗られたホセ・アルカディオ・ブエンディーアの新居の披露のためダンスパーティーが開かれる。一人前の娘となったレベーカとアマランタのお披露目でもあった。自動ピアノの準備とダンスの指導のため金髪の美青年ピエトロ・クレスピが派遣された。レベーカはピエトロ・クレスピが去るのが辛く、土を食べるという以前の悪癖が戻ってしまった。町長の娘アンバーロが訪ねてきて、ピエトロ・クレスピからの手紙をわたし、レベーカと友達になる。

 

▶︎アウレリャーノとピラル・テルネーラの子供アウレリャーノ・ホセが誕生、レメディオスとの結婚と彼女の死

 アウレリャーノはレメディオスが忘れられず、深酒をし、ピラル・テルネーラと一夜をともにし、彼女は妊娠する。産まれた子供はアウレリャーノ・ホセと名付けられた。

 レベーカはピエトロ・クレスピと結婚することになり、やはり彼に想いを寄せていたアマランタ失恋し何としても結婚を阻止しようと思う。

 アウレリャーノと初潮を迎えたレメディオスは挙式をあげた。ほどなく、ふたごを妊娠するが、自家中毒で亡くなる。

 

▶︎レベーカとピエトロ・クレスピの結婚延期〜ホセ・アルカディオとの結婚

 レメディオスの不幸があったため、レベーカとピエトロ・クレスピの結婚は無期限延期となっていた。

 ある日突然ホセ・アルカディオが帰ってきて、レベーカと結ばれ、結婚する。ホセ・アルカディオはピエトロ・クレスピにそれではアマランタと一緒になればよいというが、釈然としない二人。

 アウレリャーノと亡きレメディオスの父は友情を深め、町で行われた国政選挙の管理を行った。しかし、不正が行われ保守派が勝つ。戦争が始まり、自由主義者であった村の医師が軍部に殺される。

 

▶︎戦争が始まる〜アルカディオの処刑・アウレリャーノ・ブエンディーア大佐の逃亡

 アウレリャーノは革命軍に加わり、アウレリャーノ・ブエンディーア大佐となる。

 アルカディオも軍隊に加わり、町長兼司令官となりマコンドで最も残忍な支配者となる。ウルスラは怒りアルカディオを叱責する。

 アマランタとピエトロ・クレスピの結婚も間近かと思われたが、アマランタに求婚を断られ、剃刀で手首を切り自殺してしまう。アマランタは燃えるかまどに手を突っ込んだ。

 アルカディオは自分の母だということを知らず、ピラル・テルネーラに言い寄るが、サンタ・ソフィア・デ・ラ・ピエダという娘を紹介され子供をもうける。公費を使って自宅を建設しようとし、ウルスラの怒りを買う。

 自由派の敗北はいよいよ濃厚となり、町は敵軍に陥落しアルカディオは処刑される。

 処刑前、アルカディオは自分の一生を振り返ってみて、初めて彼はこれまで憎んできた人間を実際には深く愛していることを悟った。まだ名前のついていない八か月の娘には、祖母にちなんでウルスラと、生まれる子供が男だったら祖父の名前をつけるよう頼んだ。撃たれる直前「しまった!女が生まれたら、レメディオスとつけるよう言っておくんだった」

 戦闘は終わり、アウレリャーノ・ブエンディーア大佐には死刑の宣告が下される。死刑執行はマコンドで行うようアウレリャーノは希望した。しかし死刑執行者たちは、民衆の反抗を恐れ大佐の銃殺を躊躇した。ホセ・アルカディオとレベーカが銃殺を妨害し、アウレリャーノは逃亡を続ける。

 家では、処刑されたアルカディオの妻サンタ・ソフィア・デ・ラ・ピエダとその長女と生まれたふたごが引き取られ、にぎやかだった。アルカディオの遺言どおりというわけにはいかなかったが、長女は(小町娘の)レメディオス、ふたごの男の子はホセ・アルカディオ・セグンド、アウレリャーノ・セグンドと名付けられた。

 アウレリャーノ・ブエンディーア大佐の逃亡から一年たった頃、ホセ・アルカディオは自宅で変死し、レベーカは世間との接触をたった。

 アウレリャーノ・ブエンディーア大佐はマコンドに戻り、最も信頼するヘリネルド・マルケス大佐をマコンドの町長兼司令官に任命すると反乱グループと接触すべく町を去った。

 ヘリネルド・マルケスはアマランタに求婚するが、アマランタは承諾しなかった。ホセ・アルカディオ・ブエンディーアは老衰で亡くなる。


▶︎アマランタとアウレリャーノ・ホセ/生きていたアウレリャーノ・ブエンディーア大佐

 アマランタはアウレリャーノ・ホセを引き取り育てていた。アマランタと成長したアウレリャーノ・ホセは危険な関係に陥り、彼女はひとおもいにその関係を断ち、アウレリャーノ・ホセは軍事教練の兵営で寝起きすることになる。

 アウレリャーノ・ホセは父親アウレリャーノ・ブエンディーア大佐に同行することになった。

アウレリャーノ・ブエンディーア大佐が死亡したというニュースが流れたが、数年後にウルスラのもとに彼から手紙が届いた。マコンドの町長は保守派のモンカーダ将軍が務めていた。彼はマコンドを市に昇格させ初代市長となった。そして戦争を過去の愚かしい悪夢だと思わせるような相互の信頼を築きあげていった。だが、マコンドに帰ってきたアウレリャーノ・ブエンディーア大佐は、ウルスラの反対にもかかわらず彼を銃殺刑にする。

 アウレリャーノ・ブエンディーア大佐は、大きな権力にともなう孤独の中で、進むべき道を見失いはじめていた。17人の情婦を持ち17人のアウレリャーノが生まれた。

 20年間に及ぶ戦争が停戦となり、アウレリャーノ・ブエンディーア大佐は我が家に帰った。小町娘のレメディオスやふたごの兄弟はほとんど彼のことを知らなかった。大佐は停戦協定の調印式で自殺を図るが未遂に終わる。そして体が回復した後も、我が家に居ついた。ウルスラはいくつも重なった喪を打ち切り、家の中にかつての正気をよみがえらせた。

 

▶︎ふたごの兄弟と小町娘のレメディオス

 一家の歴史の中で、似たような名前が繰り返しつけられてきたが、「アウレリャーノ」を名のるものは内向的だが頭がよく、「ホセ・アルカディオ」を名のる者は衝動的で度胸はいいが、悲劇の影がつきまとう。が、ふたごの男の子ホセ・アルカディオ・セグンド、アウレリャーノ・セグンドはどちらともいえなかった。小さいころ、二人はよく入れ替わっていたが、母親でも見分けがつかなかった。

 戦争中、ふたごには決定的な違いが出てくる。アウレリャーノ・セグンドは鍵のかけられていた部屋の中で本や草稿を読んだり、メルキアデスの亡霊と話をするのが好きだったが、成長するとアコーディオンの名手になった。

 ホセ・アルカディオ・セグンドは神学論争の術にたけ、闘鶏師になった。

 二人はペトロ・ニコスという混血の女を分け合った。

 小町娘のレメディオスはこの世のものではないほどの美しい娘に育ち、カーニバルの女王に選ばれた。しかし知恵遅れで20歳になっても読み書きができず、服を自分で着ることもできなかった。   

 アウレリャーノ・ブエンディーア大佐は静かに余生を送っていたが、そうは思っていない連中もいてこのカーニバルでは何人もの死者・負傷者が出た。

 アウレリャーノ・セグンドはカーニバルに連れてこられた全国5000人の美人の中から最も美しい女として選ばれたフェルナンダ・デル・カルピオと結婚した。しかし、ペトロ・ニコスとの関係は続けた。というのはピエトロ・ニコスと同衾すると何故家の家畜が子を産み、富をもたらしたからだった。

 フェルナンダは家族に溶け込もうとせず、家族中の反感を買った。長女が生まれ名前をつける際も一悶着あり、ウルスラの提案のレメディオスとフェルナンダの希望と合わせてレナータ・レメディオス(メメ)と名付けた。その後生まれた長男はホセ・アルカディオと名付けられた。

 アウレリャーノ・ブエンディーア大佐の表彰式が行われることになり、各地からそれぞれ母親の違う17人のアウレリャーノがお祝いに集まる。アウレリャーノ・セグンドは彼らにここに残って一緒に仕事をしようと誘い、祖父の激しい起床と探究心を受け継いでいる大男、アウレリャーノ・トリステが残った。

 アウレリャーノ・トリステが町へ来て数ヶ月たち人びとに尊敬されるようになり、母親と独身の妹を引き取るために家を探していると、崩れかけた一軒の家を発見する。そこには亡者のような老女レベーカがいた。アウレリャーノ・セグンドの提案で一家の元に戻るよう説得されたがレベーカは頑なに拒んだ。

 アウレリャーノ・ブエンディーア大佐の16人の息子が再び集まったとき、彼らはたった半日でレベーカの家の外装の修繕を行った。その中の1人アウレリャーノ・センテーノが残りアウレリャーノ・トリステの仕事を手伝うことになる。彼らは製氷工場を作り、鉄道を敷いた。


▶︎小町娘レメディオスの昇天

 小町娘レメディオスを一目見た男たちは、その美しさに心を奪われ、これまでに求愛した4人の男は皆、事故死、自殺を遂げていた。ウルスラもアマランタも彼女に簡単な家事を教え込むことを、すでに放棄していた。ある日フェルナンダがシーツを庭でたたむために家じゅうの女に手助けを求めた。「光をはらんだ弱々しい風がその手からシーツを奪って、いっぱいにそれを広げるのを見た。(中略)小町娘レメディオスの体がふわりと宙に浮き上がった。目まぐるしくはばたくシーツに包まれながら、別れの手を振っている小町娘レメディオスの姿が見えた。彼女はシーツに抱かれて舞いあがり、黄金虫やダリアの花のただよう風を見捨て、午後四時も終わろうとする風のなかを抜けて、もっと高く飛ぶことのできる記憶のとりでさえ追っていけないはるかな高みへ、永遠に姿を消した。


▶︎アウレリャーノ・セグンドの家族〜アウレリャーノ・ブエンディーア大佐の死

 17人のアウレリャーノは目に見えない犯人によって次々と狙われ、最後1番年上のアウレリャーノ・アマドルを残し虐殺された。

 ウルスラは高齢で目は見えなくなったが、嗅覚や知恵を使って、不自由せず暮らしていた。視力を失った代わりに冴えてきた頭で真実に気づくようになった。アウレリャーノ・ブエンディーア大佐はいまだかつて妻も子どもも含め人を愛したことがない、戦いに明け暮れていたのも、理想のためでなく、業にも似た自尊心によるものだった、と。

アウレリャーノ・セグンドは、妻フェルナンダのいる自宅に毎日顔を出したが、愛人ペトラ、・ラコステの家に住むようになった。毎年娘メメが休暇で帰ってくる2ヶ月は模範的父親を演じ、妹アマランタ・ウルスラが生まれる。長男のホセ・アルカディオは神学校に行くことになった。メメは、母親の性格は受け継いでおらず、若い頃のアマランタにそっくりだった。まだ一族の宿命的な孤独のきざしはなかった。メメの休暇中、アウレリャーノ・ブエンディーア大佐は中庭の栗の木の下で亡くなる。

 

 ▶︎アマランタの死〜メメの恋

 アマランタは長年レベーカより長生きすることを願い、憎しみを込めて彼女の経帷子を織り、死の儀式の本職に、名人になっていった。仕事に打ち込む中でアウレリャーノ・ブエンディーア大佐が飽きもせず金の小魚の細工を繰り返していた訳がわかった。外の世界は皮膚の表面で終わり、内面はいっさいの悩みから解放された。レベーカより先に自分の予言とおりに亡くなってしまう。

 メメと父親は気が合い、仲良く映画館に出かけたりしたが、母親フェルナンダとは気が合わなかった。年頃になり、マコンドで生まれ育ちバナナ工場で働いているマウシリオ・バビロニアとつきあう。恋に悩んだメメはトランプ占いをしてもらいに100歳を超えるピラル・テルネーラを訪ねる。メメは彼女が自分の曾祖母であることを知らない。メメはマウシリオ・バビロニアに身を任せる。その関係がフェルナンダの知るところとなり、メメは自宅に閉じ込められる。マウシリオ・バビロニアはメメが待ちこがれている浴室に忍びこもうとしているところを警官に撃たれ、一生ベッドを離れられない体になった。

 メメは修道院に入れられ子供を生み、フェルナンダが引きとりアウレリャーノと名付けられた。


 ホセ・アルカディオ・セグンドはバナナ会社の労働者を扇動しストを起こし、町でデモを扇動した。彼は軍から、追われてマコンドの実家のメルキアデスの部屋で幽閉生活を送った。

 雨が何ヶ月も降り続き、アウレリャーノ・セグンドはフェルナンダのもとに戻っており、アウレリャーノが孫と知り喜んだ。雨が激しく降る中、ヘリネルド・マルケス大佐の葬列が通った。

 長雨はさらに何年も続いた後、アウレリャーノ・セグンドは、ペトラ、・ラコステの家に戻っていった。長く生きたウルスラは息をひきとった。115歳〜120歳だった。その年の暮れレベーカが亡くなった。

 ウルスラの死後、屋敷は荒れていき、てきぱきとした近代的女性に成長したアマランタ・ウルスラは客を歓待するもとの屋敷に戻そうとしたが、非社交的なフェルナンダによって阻まれた。

 メメの子のアウレリャーノは、思春期になると無愛想で沈みがちな子になっていったが、ある日、誰かがバナナ工場に見捨てられたから町が衰退したと言ったのに反駁し、バナナ会社が混乱させ堕落させ搾取する前のマコンドは、正しい道を進む栄えた町だった、と語った。

 アマランタ・ウルスラは遊学のためブラッセルにたった。メルキアデスの部屋で幽閉生活をしていたホセ・アルカディオ・セグンドは羊皮紙の文字を解読中、突然亡くなった。咳症状で苦しんでいたふたごの弟アウレリャーノ・セグンドも同じ時刻に亡くなった。


▶︎アウレリャーノとホセ・アルカディオ〜アウレリャーノとアマランタ・ウルスラ

メメの息子のアウレリャーノはメルキアデスの部屋に閉じこもり羊皮紙の文字の研究を行なっていた。ローマの神学校に行かされ(実際には行かなかった?)長く留守にしていたフェルナンダの息子ホセ・アルカディオも母の死期が迫っているときき戻ってきた。ホセ・アルカディオはいまだに亡くなったアマランタを慕っていた。

 町の子供たちのうち4人が喘息もちのホセ・アルカディオの世話をした。ある日ホセ・アルカディオはウルスラの部屋で子供たちと一緒に隠し金貨を見つけ、屋敷をパラダイスに一変させた。

 ある日、アウレリャーノ・ブエンディーア大佐の17人の子供のうちただ1人生き残ったアウレリャーノ・アマドルが匿ってくれと屋敷を訪ねてきたが、ホセ・アルカディオもアウレリャーノも彼をただの浮浪人と思い、表に突き出すと、追ってきた二人の警官に射殺された。

 ある朝、ホセ・アルカディオが毎日の水浴を終えようとしていると、屋敷から放逐したはずの4人の子供が忍びこんできて、髪をつかんで彼の頭を水中にしずめた。そして金貨の袋を盗んでいった。いまだにアマランタを思い続けている彼の死体を見て、アウレリャーノはそのとき初めて、自分がいかに彼を深く愛するようになっていたかを知った。

 その数ヶ月後、アマランタ・ウルスラが半年前に結婚した夫とともに戻ってきた。彼女はウルスラ同様行動的で、小町娘のレメディオスに劣らぬ美貌に恵まれていた。

 アマランタ・ウルスラとアウレリャーノは愛し合う。一族の百年の歴史の中で初めて愛しあった男女だった。やがてアマランタ・ウルスラは妊娠・出産するが出血が止まらず死ぬ。近親相姦で産まれた子どもには豚の尻尾があったがやはりすぐ亡くなり蟻の群に運ばれていった。

 アウレリャーノは自分の出生と運命を知るため羊皮紙を飛ばし読みした。しかしアウレリャーノ・バビロニアが羊皮紙の解読を終えた瞬間に、この鏡の蜃気楼の町は風によってなぎ倒され、人間の記憶から消えてしまうことは明らかだった。

羊皮紙の題辞には<この一族の最初の者は樹につながれ、最後の者は蟻のむさぼるところとなる。>とあった。

 

 

#百年の孤独 #ガルシアマルケス #マルケス

#南米文学 #ラテンアメリカ文学 #コロンビア文学