猫の本棚名作紹介ブログ

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カラマーゾフの兄弟(下)少年たち

#カラマーゾフの兄弟

#ドストエフスキー

#少年たち


スピンオフドラマとして独立させたいような物語です。

 

第四部

第十編 少年たち

親殺しの話の前に、いったんイリューシャと同級生たちの物語に移ります。

 


まるで学園ドラマなのですが悲しすぎる展開です。

 


イリューシャは、上巻で衆人環視の中、ドミートリイに乱暴を受けた失業中の二等大尉スネギリョフの中学生の息子です。イリューシャはその父親の様子を少年たちにからかわれ、石を投げられたのだった。

 


父親はイリューシャのプライドを傷つけたくないからとアリョーシャの見舞い金を受け取らなかったという話でした。

 


しかし、少年たちのリーダー格コーリャによれば少し事情は違う。

 


コーリャは勇敢で腕白でかつ学業成績優秀だった。彼は少年たちと線路のレールの間に横たわるというチキンレースをし、列車が走り去るまで逃げなかったので皆から一目おかれていた。(実は気絶していたのだが。)

 


予備クラスに入った見すぼらしい格好をしているイリューシャを皆がいじめ出した。2級上のコーリャは遠くから見ていたが、イリューシャはちっぽけで弱々しいのに、気位の高い子で降参せず向かっていく。

 


コーリャはこういう子が好きなので、かばってあげて仲良くなる。

 


しかし、なにかのきっかけでカラマーゾフ家の召使いのスメルジャコフと親しくなったイリューシャは、彼に残酷で卑劣な動物虐待をそそのかす。どこかの番犬のジェーチカにピンを埋め込んだパンを与えたのだった。犬は姿を見せなくなった。イリューシャは酷いことをしたと後悔していた。

 


コーリャが残虐な行為をしたイリューシャと絶交すると、子どもたちは再びイリューシャをいじめ、石を投げたのだった。

 


そのあと、イリューシャは重病になる。子どもたちはアリョーシャに引きつられてお見舞いに行く。コーリャは責任を感じているのに、アリョーシャに言われていくのは嫌だ、となかなか行こうとしない。

 


何日かたってようやくコーリャは自分の犬のペレズヴォンを連れて見舞いに行く。

 


ペレズヴォンは実は、ジェーチカだった。イリューシャを喜ばそうと、コーリャが芸を仕込んでいたのだった。イリューシャはとても喜ぶ。

 


そこへ医者がきて、助けるのは難しいと父親に話す。それを察したイリューシャは

「パパ、泣かないでよ…、僕が死んだら、他のいい子もらってね… .イリューシャって名前をつけて、僕の代わりに可愛がってね…」

コーリャも父親も小屋の外に走り出て、泣き出す。

ところで、この早熟なコーリャはかなり背伸びはしているが、自分は無神論者の社会主義者だという。アリョーシャは、いったい誰にそんなことを吹き込まれたのだと驚く。だが、ずっと以前からコーリャはアリョーシャに憧れていたとも言う。2人はお互い意気投合したみたいだ。

 


しかし、ここでまた難解な言葉が!

 


「あのね、コーリャ、それはそうと君はこの人生でとても不幸な人になるでしょうよ」突然どういうわけか、アリョーシャが言った。

「知ってます、知ってますとも。本当にあなたは何もかも前もってわかるんですね!」

「しかし、全体としての人生は、やはり祝福なさいよ」

 


長老ゾシマがアリョーシャに伝えた言葉と同じでした。

「お前はこの壁の中から出ていっても、俗世間でも修道僧としてありつづけることだろう。大勢の敵を持つことになろうが、ほかならぬ敵たちでさえ、お前を愛することになるだろうよ。人生はお前に数多くの不幸をもたらすけれど、お前はその不幸によって幸福になり、人生を祝福し、ほかの人々にも祝福させるようになるのだ。これが何より大切なことだ。お前はそういう人間なのだ。」

第六編ー1中巻 p59

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