猫の本棚名作紹介ブログ

古今東西の名作を日々の雑感もまじえ紹介します。読書で人生を豊かに。

『オデュッセイア』 ホメロス

#オデュッセイア

#ホメロス

#松平千秋 訳

#岩波新書

 

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古代ギリシャの長編叙事詩

壮大な冒険ファンタジー

ジブリのアニメを見ているよう。

実際『風の谷のナウシカ』の冒険譚や、『千と千尋の神隠し』の豚に変えられた話は『オデュッセイア』から想を得ているのだろうけれど。

 


紀元前8世紀頃の伝承物語だが、近現代の文学のように文体やら何やら凝っていない分だけストレートに伝わってくるものがある。

 

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忘れないよう書き出した登場人物(神々)のリスト。〈ア〉行が圧倒的に多い。

 


▶︎涙、涙の航海

勇猛な兵士たちが何度も大粒の涙を流す。

望郷の念で涙。

仲間の死に涙。

艱難辛苦に涙。

 


▶︎オデュッセウスの息子テレマコス (第一歌〜第四歌)

 


オデュッセウスはトロイヤ戦争に出兵し活躍し、ギリシャ軍は勝利を治めるが、何年たっても帰還しない。

妻ペネロペイアの元には求婚者たちが押しかけ、横暴な振るまいをするが、若いテレマコスには求婚者たちを追い払う力はない。ペネロペイアは夫の帰還を信じて耐え続けている。

 


繊細で多感なテレマコスは女神アテネに励まされ、父親を探す旅に出る。

 


▶︎女神カリュプソ (第五歌)

 


オデュッセウスは女神カリュプソの洞窟で7年もの間足留めされていたが、神々の会議でオデュッセウスを帰国させることが決まり、カリュプソはやむなく従う。

オデュッセウスは筏を作り、故郷に向けて大海を漕ぎ出すが、嵐にあい遭難する。

 


▶︎パイエケス人の国の王女ナウシカア (第六歌)

 


オデュッセウスはパイエケス人の国に漂着し、洗い場で洗濯していたナウシカアに助けられ王宮に行く。

 


▶︎王アルキノオスとの対面 (第七歌〜第八歌)

 


オデュッセウスは王アルキノオスにこれまでの経緯を説明し、信用を得る。

アルキノオスは宴席を設け、オデュッセウスは楽人の歌うトロイヤ戦の物語に涙する。また、円盤投げの腕前を披露する。

 


▶︎王アルキノオスに語る漂流譚—蓮喰い族〜キュクロプス— (第九歌)

 


オデュッセウスは素性を明かし、漂流譚を語る。

ロートバゴイ族のロータス(蓮)は美味でそれを食べた部下たちは帰還する気が失せてしまった。

 


隻眼の巨人キュクロプス族の国では多くの部下をキュクロプスに食われた。オイディプスキュクロプスの一人、ポセイドンの子のポリュペモスの目を潰した。

 


▶︎ 王アルキノオスに語る漂流譚—風の神アイオロス〜女神キルケ (第十歌)

 


風の神アイオロスの島では厚いもてなしを受け、風を封じ込めた袋をもらうが、帰国寸前に部下が開いたため嵐になってしまう。

 


女神キルケの島では、部下たちが秘薬を使うキルケに豚に変えさせられたりするが、元の姿に戻してもらい歓待を受け、その島で1年を過ごす。

 


▶︎ 王アルキノオスに語る漂流譚—冥府〜再びキルケ〜セイレン〜トリナキエの島(第十歌)

 


冥府では、出発直前にキルケの館の屋根から落ちて死んだエルペノルに再開し、その遺骸を引き取りにオデュッセウスは再びキルケの島に赴く。

 


魔女セイレンたちの歌を聴いた者は、魅せられその餌食になるが、オデュッセウスは、その歌が聞きたく、部下たちの耳を蜜蝋で塞ぎ、自分は帆柱に縛り付けもらい、漕ぎ抜ける。

 


トリナキエの島で部下たちは禁断の牛を食べたため、皆命を落としオデュッセウス一人残される。

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下巻は第十三歌から第二十四歌を収める。

想像もできないほど大昔の話なのに、そっくりそのまま連ドラのお手本として現代に通用しそうなほどストーリー展開も登場人物のキャラクターも心理描写も素晴らしい。

オデュッセウスはようやく故郷のイタケに帰還する。

しかし、オデュッセウスは、妻や屋敷に仕える者たちの心を試すため女神アテネに頼み乞食の姿に変えてもらう。

そして女神アテネに帰国を促され戻ってきた息子テレマコスと大号泣の再会を果たし、父子はペネロペイアの求婚者たちへの復讐の機会を窺う。

父子は、求婚者たちがオデュッセウス家を食い潰さんばかりに傍若無人に飲み喰いしている宴席に乗り込む。

女神アテネからペネロペイアに吹き込んだ提案で弓矢の競技が行われる。アテネオデュッセウスを乞食の衣装のままで元の姿以上の若いマッチョに変えたのが可笑しい。

求婚者の筆頭アンティノオスやエウリュマコスがオデュッセウスに弓矢で射られ死ぬ場面は結構リアルに描かれている。

臨場感あり、天誅が下り胸のすく思いもしたが、血の粛正はかなり残虐‥

求婚者たちと情を通じていた女中や不忠の使用人も容赦なく殺される。

求婚者エウリュマコスに気に入られていた山羊使いはここに書けないほど酷い殺され方だった。

大量殺戮の後片付けもすみ、さて、妻ペネロペイアとめでたく再会かと思いきや、目の前の男がオデュッセウスであると俄には信じられない。

本人しか知り得ない寝所の構造を知っていたことを確認し始めて夫と認める。ペネロペイアは留守中苦難の生活を送ってきたので疑ってしまったと謝り、夫婦は再会を喜ぶ。

最後は納得の結末。

殺した求婚者たちの親族と戦闘状態になるが、アテネの裁定により和解する。


#ノルウェーブッククラブ世界最高の文学

#古代ギリシャ #ギリシャ文学

#ペネロペイア #オデュッセウス

#ホメロス叙事詩

#読書ノート #読書記録

#読書好きさんと繋がりたい

#本好きさんと繋がりたい

#本のある暮らし

『百年の孤独』 ガルシア・マルケス

マコンドという架空の村のブエンディーア一族の100年にわたる物語。

 一族代々の恋愛、出産、死という人間のっtgfrtrygt普遍的な営みと、その間に勃発した戦争が語られる。


 新型コロナウイルスパンデミックで世界は誰もが想定できなかったほど様相を変えた。事実は小説より奇なりというが、はるかに小説を上回るこの不条理な現実。

 本書は魔術的・非現実的な描写と現実的描写が見事に融合し、この未曾有の厄災の只中の現実世界をも凌駕する小説のひとつだと思う。

 

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▶︎マコンド村の建設と兄弟の成長

 族長ホセ・アルカディオ・ブエンディーアは天文学錬金術に夢中になり、ジプシーのメルキアデスから実験道具を買うため妻ウルスラ・イグアランのヘソクリを使い激怒させている。

 夫婦には、兄ホセ・アルカディオ(父と同じ名前)、弟アウレリャーノという名の二人の子供がいた。そしてもう一人妊娠していた。ウルスラとホセ・アルカディオ・ブエンディーアはいとこ同士の近親婚だったので結婚当初、イグアナのような奇形が産まれることを恐れていた。夫婦に子供ができないことをからかったブルデンシオ・アギラルをホセ・アルカディオ・ブエンディーアは投げ槍で殺してしまう。ブルデンシオ・アギラルは毎晩化けて出てくるので、夫婦は移住することにした。3年以上にも及ぶ旅の途中でウルスラは健康な子供を産み落とす。そしてある川岸の野営地に村を建て、マコンドと名付けた。そこで次男アウレリャーノが誕生したのだった。


▶︎長男ホセ・アルカディオの恋愛とアルカディオの誕生、ウルスラの娘アマランタ誕生

 長男のホセ・アルカディオは堂々たる体格の若者に育った。家事の手伝いやトランプ占いをしているピラル・テルネーラという女に誘惑され、関係する。

 そんなある日ウルスラは女の赤ん坊アマランタを産む。ピラルはホセ・アルカディオに子供ができたと告げる。ホセ・アルカディオは悩むが、夜市をぶらぶらしているととても若くきれいなジプシーに出会う。ホセ・アルカディオはその娘を抱き、ジプシーたちにまじって村を去った。

 ピラル・テルネーラが産んだ男の子は生後2週間目に祖父ホセ・アルカディオ・ブエンディーアたちのもとに引き取られアルカディオと呼ばれた。その世話はビシタシオというグアヒロ族の女にまかされた。

 

▶︎次男アウレリャーノのレメディオスへの恋、レベーカの登場

 アウレリャーノは思春期に達し口数の少ない孤独を愛する人間に変わり、金細工の実験に夢中になっていた。

 ある日孤児となり両親の遺骨と手紙を携えやってきた遠縁にあたるレベーカという少女を引き取ることになる。間もなく彼女は家族の一員とみなされるようになった。

 そんな中町全体に不眠と物忘れを症状とする疫病に冒される。家中の物に名札を貼るなどして対処していたが、尋ねてきたジプシー・メルキアデスが取りだした液体を飲んだ途端、記憶が回復する。

 町長のドン・アポリナル・モスコーテはマコンドにやってきて、祖国の独立記念日を祝うため住居の壁はすべて青く塗り直すよう告示を出そうとした。それには従えないというホセ・アルカディオ・ブエンディーアとの間に対立が生じるが町長一家のために家を手配する。町長は二人の娘16歳のアンバーロと9歳の美少女レメディオスを連れてきていた。アウレリャーノはレメディオスに想いを寄せる。

 

▶︎レベーカとアマランタが美青年ピエトロ・クレスピをめぐって

 真っ白く塗られたホセ・アルカディオ・ブエンディーアの新居の披露のためダンスパーティーが開かれる。一人前の娘となったレベーカとアマランタのお披露目でもあった。自動ピアノの準備とダンスの指導のため金髪の美青年ピエトロ・クレスピが派遣された。レベーカはピエトロ・クレスピが去るのが辛く、土を食べるという以前の悪癖が戻ってしまった。町長の娘アンバーロが訪ねてきて、ピエトロ・クレスピからの手紙をわたし、レベーカと友達になる。

 

▶︎アウレリャーノとピラル・テルネーラの子供アウレリャーノ・ホセが誕生、レメディオスとの結婚と彼女の死

 アウレリャーノはレメディオスが忘れられず、深酒をし、ピラル・テルネーラと一夜をともにし、彼女は妊娠する。産まれた子供はアウレリャーノ・ホセと名付けられた。

 レベーカはピエトロ・クレスピと結婚することになり、やはり彼に想いを寄せていたアマランタ失恋し何としても結婚を阻止しようと思う。

 アウレリャーノと初潮を迎えたレメディオスは挙式をあげた。ほどなく、ふたごを妊娠するが、自家中毒で亡くなる。

 

▶︎レベーカとピエトロ・クレスピの結婚延期〜ホセ・アルカディオとの結婚

 レメディオスの不幸があったため、レベーカとピエトロ・クレスピの結婚は無期限延期となっていた。

 ある日突然ホセ・アルカディオが帰ってきて、レベーカと結ばれ、結婚する。ホセ・アルカディオはピエトロ・クレスピにそれではアマランタと一緒になればよいというが、釈然としない二人。

 アウレリャーノと亡きレメディオスの父は友情を深め、町で行われた国政選挙の管理を行った。しかし、不正が行われ保守派が勝つ。戦争が始まり、自由主義者であった村の医師が軍部に殺される。

 

▶︎戦争が始まる〜アルカディオの処刑・アウレリャーノ・ブエンディーア大佐の逃亡

 アウレリャーノは革命軍に加わり、アウレリャーノ・ブエンディーア大佐となる。

 アルカディオも軍隊に加わり、町長兼司令官となりマコンドで最も残忍な支配者となる。ウルスラは怒りアルカディオを叱責する。

 アマランタとピエトロ・クレスピの結婚も間近かと思われたが、アマランタに求婚を断られ、剃刀で手首を切り自殺してしまう。アマランタは燃えるかまどに手を突っ込んだ。

 アルカディオは自分の母だということを知らず、ピラル・テルネーラに言い寄るが、サンタ・ソフィア・デ・ラ・ピエダという娘を紹介され子供をもうける。公費を使って自宅を建設しようとし、ウルスラの怒りを買う。

 自由派の敗北はいよいよ濃厚となり、町は敵軍に陥落しアルカディオは処刑される。

 処刑前、アルカディオは自分の一生を振り返ってみて、初めて彼はこれまで憎んできた人間を実際には深く愛していることを悟った。まだ名前のついていない八か月の娘には、祖母にちなんでウルスラと、生まれる子供が男だったら祖父の名前をつけるよう頼んだ。撃たれる直前「しまった!女が生まれたら、レメディオスとつけるよう言っておくんだった」

 戦闘は終わり、アウレリャーノ・ブエンディーア大佐には死刑の宣告が下される。死刑執行はマコンドで行うようアウレリャーノは希望した。しかし死刑執行者たちは、民衆の反抗を恐れ大佐の銃殺を躊躇した。ホセ・アルカディオとレベーカが銃殺を妨害し、アウレリャーノは逃亡を続ける。

 家では、処刑されたアルカディオの妻サンタ・ソフィア・デ・ラ・ピエダとその長女と生まれたふたごが引き取られ、にぎやかだった。アルカディオの遺言どおりというわけにはいかなかったが、長女は(小町娘の)レメディオス、ふたごの男の子はホセ・アルカディオ・セグンド、アウレリャーノ・セグンドと名付けられた。

 アウレリャーノ・ブエンディーア大佐の逃亡から一年たった頃、ホセ・アルカディオは自宅で変死し、レベーカは世間との接触をたった。

 アウレリャーノ・ブエンディーア大佐はマコンドに戻り、最も信頼するヘリネルド・マルケス大佐をマコンドの町長兼司令官に任命すると反乱グループと接触すべく町を去った。

 ヘリネルド・マルケスはアマランタに求婚するが、アマランタは承諾しなかった。ホセ・アルカディオ・ブエンディーアは老衰で亡くなる。


▶︎アマランタとアウレリャーノ・ホセ/生きていたアウレリャーノ・ブエンディーア大佐

 アマランタはアウレリャーノ・ホセを引き取り育てていた。アマランタと成長したアウレリャーノ・ホセは危険な関係に陥り、彼女はひとおもいにその関係を断ち、アウレリャーノ・ホセは軍事教練の兵営で寝起きすることになる。

 アウレリャーノ・ホセは父親アウレリャーノ・ブエンディーア大佐に同行することになった。

アウレリャーノ・ブエンディーア大佐が死亡したというニュースが流れたが、数年後にウルスラのもとに彼から手紙が届いた。マコンドの町長は保守派のモンカーダ将軍が務めていた。彼はマコンドを市に昇格させ初代市長となった。そして戦争を過去の愚かしい悪夢だと思わせるような相互の信頼を築きあげていった。だが、マコンドに帰ってきたアウレリャーノ・ブエンディーア大佐は、ウルスラの反対にもかかわらず彼を銃殺刑にする。

 アウレリャーノ・ブエンディーア大佐は、大きな権力にともなう孤独の中で、進むべき道を見失いはじめていた。17人の情婦を持ち17人のアウレリャーノが生まれた。

 20年間に及ぶ戦争が停戦となり、アウレリャーノ・ブエンディーア大佐は我が家に帰った。小町娘のレメディオスやふたごの兄弟はほとんど彼のことを知らなかった。大佐は停戦協定の調印式で自殺を図るが未遂に終わる。そして体が回復した後も、我が家に居ついた。ウルスラはいくつも重なった喪を打ち切り、家の中にかつての正気をよみがえらせた。

 

▶︎ふたごの兄弟と小町娘のレメディオス

 一家の歴史の中で、似たような名前が繰り返しつけられてきたが、「アウレリャーノ」を名のるものは内向的だが頭がよく、「ホセ・アルカディオ」を名のる者は衝動的で度胸はいいが、悲劇の影がつきまとう。が、ふたごの男の子ホセ・アルカディオ・セグンド、アウレリャーノ・セグンドはどちらともいえなかった。小さいころ、二人はよく入れ替わっていたが、母親でも見分けがつかなかった。

 戦争中、ふたごには決定的な違いが出てくる。アウレリャーノ・セグンドは鍵のかけられていた部屋の中で本や草稿を読んだり、メルキアデスの亡霊と話をするのが好きだったが、成長するとアコーディオンの名手になった。

 ホセ・アルカディオ・セグンドは神学論争の術にたけ、闘鶏師になった。

 二人はペトロ・ニコスという混血の女を分け合った。

 小町娘のレメディオスはこの世のものではないほどの美しい娘に育ち、カーニバルの女王に選ばれた。しかし知恵遅れで20歳になっても読み書きができず、服を自分で着ることもできなかった。   

 アウレリャーノ・ブエンディーア大佐は静かに余生を送っていたが、そうは思っていない連中もいてこのカーニバルでは何人もの死者・負傷者が出た。

 アウレリャーノ・セグンドはカーニバルに連れてこられた全国5000人の美人の中から最も美しい女として選ばれたフェルナンダ・デル・カルピオと結婚した。しかし、ペトロ・ニコスとの関係は続けた。というのはピエトロ・ニコスと同衾すると何故家の家畜が子を産み、富をもたらしたからだった。

 フェルナンダは家族に溶け込もうとせず、家族中の反感を買った。長女が生まれ名前をつける際も一悶着あり、ウルスラの提案のレメディオスとフェルナンダの希望と合わせてレナータ・レメディオス(メメ)と名付けた。その後生まれた長男はホセ・アルカディオと名付けられた。

 アウレリャーノ・ブエンディーア大佐の表彰式が行われることになり、各地からそれぞれ母親の違う17人のアウレリャーノがお祝いに集まる。アウレリャーノ・セグンドは彼らにここに残って一緒に仕事をしようと誘い、祖父の激しい起床と探究心を受け継いでいる大男、アウレリャーノ・トリステが残った。

 アウレリャーノ・トリステが町へ来て数ヶ月たち人びとに尊敬されるようになり、母親と独身の妹を引き取るために家を探していると、崩れかけた一軒の家を発見する。そこには亡者のような老女レベーカがいた。アウレリャーノ・セグンドの提案で一家の元に戻るよう説得されたがレベーカは頑なに拒んだ。

 アウレリャーノ・ブエンディーア大佐の16人の息子が再び集まったとき、彼らはたった半日でレベーカの家の外装の修繕を行った。その中の1人アウレリャーノ・センテーノが残りアウレリャーノ・トリステの仕事を手伝うことになる。彼らは製氷工場を作り、鉄道を敷いた。


▶︎小町娘レメディオスの昇天

 小町娘レメディオスを一目見た男たちは、その美しさに心を奪われ、これまでに求愛した4人の男は皆、事故死、自殺を遂げていた。ウルスラもアマランタも彼女に簡単な家事を教え込むことを、すでに放棄していた。ある日フェルナンダがシーツを庭でたたむために家じゅうの女に手助けを求めた。「光をはらんだ弱々しい風がその手からシーツを奪って、いっぱいにそれを広げるのを見た。(中略)小町娘レメディオスの体がふわりと宙に浮き上がった。目まぐるしくはばたくシーツに包まれながら、別れの手を振っている小町娘レメディオスの姿が見えた。彼女はシーツに抱かれて舞いあがり、黄金虫やダリアの花のただよう風を見捨て、午後四時も終わろうとする風のなかを抜けて、もっと高く飛ぶことのできる記憶のとりでさえ追っていけないはるかな高みへ、永遠に姿を消した。


▶︎アウレリャーノ・セグンドの家族〜アウレリャーノ・ブエンディーア大佐の死

 17人のアウレリャーノは目に見えない犯人によって次々と狙われ、最後1番年上のアウレリャーノ・アマドルを残し虐殺された。

 ウルスラは高齢で目は見えなくなったが、嗅覚や知恵を使って、不自由せず暮らしていた。視力を失った代わりに冴えてきた頭で真実に気づくようになった。アウレリャーノ・ブエンディーア大佐はいまだかつて妻も子どもも含め人を愛したことがない、戦いに明け暮れていたのも、理想のためでなく、業にも似た自尊心によるものだった、と。

アウレリャーノ・セグンドは、妻フェルナンダのいる自宅に毎日顔を出したが、愛人ペトラ、・ラコステの家に住むようになった。毎年娘メメが休暇で帰ってくる2ヶ月は模範的父親を演じ、妹アマランタ・ウルスラが生まれる。長男のホセ・アルカディオは神学校に行くことになった。メメは、母親の性格は受け継いでおらず、若い頃のアマランタにそっくりだった。まだ一族の宿命的な孤独のきざしはなかった。メメの休暇中、アウレリャーノ・ブエンディーア大佐は中庭の栗の木の下で亡くなる。

 

 ▶︎アマランタの死〜メメの恋

 アマランタは長年レベーカより長生きすることを願い、憎しみを込めて彼女の経帷子を織り、死の儀式の本職に、名人になっていった。仕事に打ち込む中でアウレリャーノ・ブエンディーア大佐が飽きもせず金の小魚の細工を繰り返していた訳がわかった。外の世界は皮膚の表面で終わり、内面はいっさいの悩みから解放された。レベーカより先に自分の予言とおりに亡くなってしまう。

 メメと父親は気が合い、仲良く映画館に出かけたりしたが、母親フェルナンダとは気が合わなかった。年頃になり、マコンドで生まれ育ちバナナ工場で働いているマウシリオ・バビロニアとつきあう。恋に悩んだメメはトランプ占いをしてもらいに100歳を超えるピラル・テルネーラを訪ねる。メメは彼女が自分の曾祖母であることを知らない。メメはマウシリオ・バビロニアに身を任せる。その関係がフェルナンダの知るところとなり、メメは自宅に閉じ込められる。マウシリオ・バビロニアはメメが待ちこがれている浴室に忍びこもうとしているところを警官に撃たれ、一生ベッドを離れられない体になった。

 メメは修道院に入れられ子供を生み、フェルナンダが引きとりアウレリャーノと名付けられた。


 ホセ・アルカディオ・セグンドはバナナ会社の労働者を扇動しストを起こし、町でデモを扇動した。彼は軍から、追われてマコンドの実家のメルキアデスの部屋で幽閉生活を送った。

 雨が何ヶ月も降り続き、アウレリャーノ・セグンドはフェルナンダのもとに戻っており、アウレリャーノが孫と知り喜んだ。雨が激しく降る中、ヘリネルド・マルケス大佐の葬列が通った。

 長雨はさらに何年も続いた後、アウレリャーノ・セグンドは、ペトラ、・ラコステの家に戻っていった。長く生きたウルスラは息をひきとった。115歳〜120歳だった。その年の暮れレベーカが亡くなった。

 ウルスラの死後、屋敷は荒れていき、てきぱきとした近代的女性に成長したアマランタ・ウルスラは客を歓待するもとの屋敷に戻そうとしたが、非社交的なフェルナンダによって阻まれた。

 メメの子のアウレリャーノは、思春期になると無愛想で沈みがちな子になっていったが、ある日、誰かがバナナ工場に見捨てられたから町が衰退したと言ったのに反駁し、バナナ会社が混乱させ堕落させ搾取する前のマコンドは、正しい道を進む栄えた町だった、と語った。

 アマランタ・ウルスラは遊学のためブラッセルにたった。メルキアデスの部屋で幽閉生活をしていたホセ・アルカディオ・セグンドは羊皮紙の文字を解読中、突然亡くなった。咳症状で苦しんでいたふたごの弟アウレリャーノ・セグンドも同じ時刻に亡くなった。


▶︎アウレリャーノとホセ・アルカディオ〜アウレリャーノとアマランタ・ウルスラ

メメの息子のアウレリャーノはメルキアデスの部屋に閉じこもり羊皮紙の文字の研究を行なっていた。ローマの神学校に行かされ(実際には行かなかった?)長く留守にしていたフェルナンダの息子ホセ・アルカディオも母の死期が迫っているときき戻ってきた。ホセ・アルカディオはいまだに亡くなったアマランタを慕っていた。

 町の子供たちのうち4人が喘息もちのホセ・アルカディオの世話をした。ある日ホセ・アルカディオはウルスラの部屋で子供たちと一緒に隠し金貨を見つけ、屋敷をパラダイスに一変させた。

 ある日、アウレリャーノ・ブエンディーア大佐の17人の子供のうちただ1人生き残ったアウレリャーノ・アマドルが匿ってくれと屋敷を訪ねてきたが、ホセ・アルカディオもアウレリャーノも彼をただの浮浪人と思い、表に突き出すと、追ってきた二人の警官に射殺された。

 ある朝、ホセ・アルカディオが毎日の水浴を終えようとしていると、屋敷から放逐したはずの4人の子供が忍びこんできて、髪をつかんで彼の頭を水中にしずめた。そして金貨の袋を盗んでいった。いまだにアマランタを思い続けている彼の死体を見て、アウレリャーノはそのとき初めて、自分がいかに彼を深く愛するようになっていたかを知った。

 その数ヶ月後、アマランタ・ウルスラが半年前に結婚した夫とともに戻ってきた。彼女はウルスラ同様行動的で、小町娘のレメディオスに劣らぬ美貌に恵まれていた。

 アマランタ・ウルスラとアウレリャーノは愛し合う。一族の百年の歴史の中で初めて愛しあった男女だった。やがてアマランタ・ウルスラは妊娠・出産するが出血が止まらず死ぬ。近親相姦で産まれた子どもには豚の尻尾があったがやはりすぐ亡くなり蟻の群に運ばれていった。

 アウレリャーノは自分の出生と運命を知るため羊皮紙を飛ばし読みした。しかしアウレリャーノ・バビロニアが羊皮紙の解読を終えた瞬間に、この鏡の蜃気楼の町は風によってなぎ倒され、人間の記憶から消えてしまうことは明らかだった。

羊皮紙の題辞には<この一族の最初の者は樹につながれ、最後の者は蟻のむさぼるところとなる。>とあった。

 

 

#百年の孤独 #ガルシアマルケス #マルケス

#南米文学 #ラテンアメリカ文学 #コロンビア文学

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山の音

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#山の音 1949〜1954(昭和24〜29)

#川端康成 1899〜1972(明治32〜昭和47)

#岩波文庫

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今まで読んだ川端作品とはだいぶ趣きが違う。

敗戦直後のある家族の風景を、老いを自覚するようになった父親の視点から季節の移ろいとともに描く。

 


62歳の信吾は妻保子と息子修一夫婦と暮らしている。修一は若妻菊子を裏切り浮気をしている。信吾はじっと耐えている菊子を気の毒に思うと同時に淡い恋情を抱いている。

 


信吾は妻保子に対して特に不満はないのだが、若い頃亡くなった保子の美しい姉のことを慕い今でもよく思い出していた。そしてその投影であるかのように菊子を愛していた。

 


千羽鶴』同様、鎌倉が舞台だが、さすがに敗戦直後のためか古都の風情はあまり感じられない。お寺の鐘の音も信吾の聴力低下を示すために描かれていた。信吾は認知機能や記憶力は少々おぼつかなくなっているが、東京にある会社に横須賀線で通勤している。

 


息子修一もその会社に勤めており、会社の女の知り合いの戦争未亡人と不倫をしているのだった。菊子はそのことを知り、そんな夫の子どもを産みたくないと中絶してしまう。修一は、中絶を止めるどころか不倫相手の絹子への手切れ金を取り返し中絶費用に充てるのだった。

 


信吾は、息子の不義を知り、相手の絹子を突き止め別れさせるが、絹子もまた妊娠しており何としても産むつもりらしい。

 


一方、信吾の娘房子も夫とうまくいっておらず、2人の小さい女の子とともに実家に転がりこんでくる。

しばらくしてその夫は、女給と心中し夫だけ助かる。

 


ストーリーは大変面白く読みやすく昼ドラ的展開を呈する。美しき日本はあまり描かれていないとは言ってもやはり日本的な小道具は使用されており、今回最も重要なものは慈童の能面。

信吾の見る夢も何やら意味深。

 


印象的な言葉—

「夫婦というものは、おたがいの悪行を果てしなく吸い込んでしまう、不気味な沼のようでもある。」

 


人生の深淵に触れるような小説でもある。繰り返し読みたい味わい深い名作。

 


#日本文学

#読書ノート #読書記録

老人と海

#老人と海 1952

#ヘミングウェイ 1899-1961

#福田恆存 訳

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84日も釣果のない、運も尽きたかと思われる老人が、独り小舟で漁に出る。

 


若い頃の初読では、カジキと格闘する老人の、強いアメリカの象徴のような不屈の精神が印象的だった。

 


再読では、美しく大きいカジキや獲物を狙う鮫と老人との死闘が繰り広げられる臨場感と海の変化の描写に圧倒された。まるで大きなスクリーンで3D映画を見ているかのように。

 


ヘミングウェイの簡潔な文体がとても合っている作品だと思う。

 


そして明るいだけでなく陰影が、強さだけでなく弱さが、生き物との戦いだけではなく愛情が表現されていることに気づかされ感動した。何しろ獲物のカジキも自分の「兄弟」だというのだから。少年マノーリンがここにいてくれたら、と何度も海の上で老人がつぶやくのも印象的。

 


老人は、自身も傷を負い、翌日まで続く壮絶な知力、体力の勝負に打ち勝ちカジキを仕止めるのだが、ほっとする間もなく、血の匂いを嗅ぎつけてサメが次から次へと襲ってくる。一難去ってまた一難。自分だったら諦めてしまうかもしれない。

 


銛と綱はカジキに使ってしまったので、老人はナイフをサメに突き刺す。ナイフがなかったら、この老人、素手で闘うかもしれない。

 


老人はつぶやく。「けれど、人間は負けるように造られてはいないんだ。」「人間は殺されるかもしれない、けれど負けはしないんだぞ」

 

 

 

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蟹工船

#蟹工船 1929

#小林多喜二 1903(明治36)-1933(昭和8)

#岩波文庫

 

本日は選挙日ですね。

自分の生きる環境・社会を変えたいと思ったら選挙権使わない手はありません。

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目を背けたくなるような日本の黒歴史。戦地の兵隊も悲惨だったが、労働者も悲惨だった。しかし立ち返って見れば、現代社会においても起こりえる、起きているかもしれない労働者の過酷な実態。

 


▶︎名もなき労働者たち

 


小説は「おい地獄さ行くんだで!」で始まる。

その言葉のとおり『蟹工船』の地獄図絵が展開される。

 


蟹工船』の残酷な実態が生き生きとした筆致で描かれている。小林多喜二26歳の作品。

主役はいない群像小説。名前がつけられているものは非道な監督の浅川以外、労働者は数名だが出番が多いわけではない。漁夫、雑夫、学生、水夫、火夫と職名で呼ばれている。

 


蟹工船』という歪んだ資本主義の構造自体が主人公というべきか。

 


▶︎「蟹工船」とは

 


蟹工船博光丸は400名もの乗組員を乗せて函館を出帆し、オホーツク海カムチャッカ付近を航海している。蟹工船は「川崎船」8隻のせており、漁夫たちは川崎船にのってカニを漁猟する。船上にカニを缶詰めにする工場施設がある。

ロシアの領海に侵入して漁をすることもあり、日本の「蟹工船」に対するロシアの監視船に出会うこともある。

 


▶︎斬新な比喩表現

 


「二人はデッキの手すりに寄りかかって、かたつむりが背のびをしたように延びて、海を抱かかえ込んでいる函館の街を見ていた。――漁夫は指元まで吸いつくした煙草を唾つばと一緒に捨てた。巻煙草はおどけたように、色々にひっくりかえって、高い船腹サイドをすれずれに落ちて行った。」

 


「納豆の糸のような雨がしきりなしに、それと同じ色の不透明な海に降った。」

 


▶︎労働者を虫けらのように扱う浅川

 


博光丸と並んで航行していた秩父丸からSOSが入り、船長が救助に向かおうとすると、浅川は救助に関わるとこちらの漁が遅れる、秩父丸は保険がかけられており沈んだら得をする、といってそれを阻止する。

 


秩父丸から何度も必死な打電が入るが、博光丸は助けにいかない。「沈没です!‥。」無電係は伝えた。「乗組員四百二十五人。最後なり。救助される見込みなし。S.O.S、S.O.S、これが2、3度続いて、それで切れてしまいました。」

——もっともやりきれない場面の一つ。

 


また、あるときは海に突き出ているウインチに雑夫を20分も吊り下げた。

 


漁夫たちは何日も続く過労や脚気のため限界にきていた。

 


ある日脚気で寝たきりになっていた27歳の漁夫が死んでしまう。浅川はまるでゴミでも扱うかのように新しい麻袋があるのに古い麻袋に死体を詰めて函館に連れ帰ることもせず海に棄てた。

 


▶︎全員で決起する

 


行方不明になっていた川崎船が何日かたって、意気揚々と帰ってきた。彼らはカムチャッカの岸に打ち上げられて、ロシア人家族に救われたのだった。彼らはそこに2日間いて、地獄のような蟹工船に戻りたくなくなったが、社会主義思想を吹き込まれ戻ってきた。

そして、乗組員たちは我慢の限界に達しストライキを起こす。

 


最後の付記に記された顛末で、いくらか溜飲が下がる。

 


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カラマーゾフの兄弟(下)

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怪演を見せた父親役の吉田剛太郎はすぐブレークしたが、登場シーンも少ない脇役で意外な地味な犯人を演じていた無名の俳優は忘れ去られた。松下洸平が朝ドラで人気者になっても、すぐにスメルジャコフ役だとは気づかなかった。何かの折にもしかしてあの時の役者は、と思い調べたらそうだったので得心した。

陰惨な事件を浄化させるような、救いのある終わり方でよかった。

・     ・     ・     ・     ・

第四部

第十一編 兄イワン

イワンは父親殺しについて召使いスメルジャコフを問い詰めた。スメルジャコフは犯行を告白すると、首を吊って自殺した。犯行の手口は緻密に計画され頭脳的なものだったので、スメルジャコフをバカにしていたイワンは驚く。

 


同じフョードルの息子なのに、召使いの待遇ということへの恨みと金銭窃盗が動機と思われた。

 


さらに、スメルジャコフは、父親に対し殺意を持っていたイワンは共犯で、しかも主犯だと脅す。

衝撃を受けたイワンは譫妄症になってしまう。

 


第十二編 誤審

公判が始まった。ミーチャ(ドミートリー)には優秀で良心的な弁護士が弁護にあたった。検察側の憶測・仮定にしか過ぎない陳述を覆すが、弁護側も証拠に乏しく譫妄症のイワンの証言能力も疑問視され、結局有罪になってしまう。

 

 

 

エピローグ

ミーチャは以前イワンが提案したアメリカへの脱走計画を実行することを決意した。グルーシェニカもついていくと言う。アメリカでしばらく生活したら顔を整形して愛するロシアに戻ってくると前向きに考えている。

公判の2日後イリューシャはこの世を去った。墓の前で家族と一緒に号泣する少年たち。

 


アリョーシャは石のそばで演説する。

「これから一生の間いつも思い出し、また思い出すつもりでいる、この善良な素晴らしい感情で僕たちを結びつけてくれたのは、一体誰でしょうか、… .それは僕らにとって永久に大切な少年イリューシャにほかならないのです!決して彼を忘れないようにしましょう。」

 


追善供養のホットケーキを食べに手をつないでいきましょう、とアリョーシャが呼びかけると、

「いつまでもこうやって、一生、手をつないでいきましょう!カラマーゾフ万歳!」コーリャが感激して絶叫し、少年たち全員が、もう一度その叫びに和した。

 

 

 

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カラマーゾフの兄弟(下)少年たち

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スピンオフドラマとして独立させたいような物語です。

 

第四部

第十編 少年たち

親殺しの話の前に、いったんイリューシャと同級生たちの物語に移ります。

 


まるで学園ドラマなのですが悲しすぎる展開です。

 


イリューシャは、上巻で衆人環視の中、ドミートリイに乱暴を受けた失業中の二等大尉スネギリョフの中学生の息子です。イリューシャはその父親の様子を少年たちにからかわれ、石を投げられたのだった。

 


父親はイリューシャのプライドを傷つけたくないからとアリョーシャの見舞い金を受け取らなかったという話でした。

 


しかし、少年たちのリーダー格コーリャによれば少し事情は違う。

 


コーリャは勇敢で腕白でかつ学業成績優秀だった。彼は少年たちと線路のレールの間に横たわるというチキンレースをし、列車が走り去るまで逃げなかったので皆から一目おかれていた。(実は気絶していたのだが。)

 


予備クラスに入った見すぼらしい格好をしているイリューシャを皆がいじめ出した。2級上のコーリャは遠くから見ていたが、イリューシャはちっぽけで弱々しいのに、気位の高い子で降参せず向かっていく。

 


コーリャはこういう子が好きなので、かばってあげて仲良くなる。

 


しかし、なにかのきっかけでカラマーゾフ家の召使いのスメルジャコフと親しくなったイリューシャは、彼に残酷で卑劣な動物虐待をそそのかす。どこかの番犬のジェーチカにピンを埋め込んだパンを与えたのだった。犬は姿を見せなくなった。イリューシャは酷いことをしたと後悔していた。

 


コーリャが残虐な行為をしたイリューシャと絶交すると、子どもたちは再びイリューシャをいじめ、石を投げたのだった。

 


そのあと、イリューシャは重病になる。子どもたちはアリョーシャに引きつられてお見舞いに行く。コーリャは責任を感じているのに、アリョーシャに言われていくのは嫌だ、となかなか行こうとしない。

 


何日かたってようやくコーリャは自分の犬のペレズヴォンを連れて見舞いに行く。

 


ペレズヴォンは実は、ジェーチカだった。イリューシャを喜ばそうと、コーリャが芸を仕込んでいたのだった。イリューシャはとても喜ぶ。

 


そこへ医者がきて、助けるのは難しいと父親に話す。それを察したイリューシャは

「パパ、泣かないでよ…、僕が死んだら、他のいい子もらってね… .イリューシャって名前をつけて、僕の代わりに可愛がってね…」

コーリャも父親も小屋の外に走り出て、泣き出す。

ところで、この早熟なコーリャはかなり背伸びはしているが、自分は無神論者の社会主義者だという。アリョーシャは、いったい誰にそんなことを吹き込まれたのだと驚く。だが、ずっと以前からコーリャはアリョーシャに憧れていたとも言う。2人はお互い意気投合したみたいだ。

 


しかし、ここでまた難解な言葉が!

 


「あのね、コーリャ、それはそうと君はこの人生でとても不幸な人になるでしょうよ」突然どういうわけか、アリョーシャが言った。

「知ってます、知ってますとも。本当にあなたは何もかも前もってわかるんですね!」

「しかし、全体としての人生は、やはり祝福なさいよ」

 


長老ゾシマがアリョーシャに伝えた言葉と同じでした。

「お前はこの壁の中から出ていっても、俗世間でも修道僧としてありつづけることだろう。大勢の敵を持つことになろうが、ほかならぬ敵たちでさえ、お前を愛することになるだろうよ。人生はお前に数多くの不幸をもたらすけれど、お前はその不幸によって幸福になり、人生を祝福し、ほかの人々にも祝福させるようになるのだ。これが何より大切なことだ。お前はそういう人間なのだ。」

第六編ー1中巻 p59

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